昨日の続きです。
おっかさん、また引っ越すのと、孟子言い
これは読む人の、知的ベースが無いとわからない川柳でした。
今日は、読む人の想像力に訴える俳句です。
「宿貸せと刀投げ出す吹雪かな」 与謝蕪村
状況がイメージできましたか?
時は戦国、吹雪の夜、山の中に一軒ぽつんと立つ家の戸を、突然どんどんと叩く音がする。誰だろうと、恐る恐る空けると、雪まみれの武士が倒れ込むように入ってきた。額には太刀傷。そして、腰に挿した刀を投げ出すように置いて、一晩、泊めてくれと怒鳴るように言った。黒澤映画の緊迫した一シーンです。これだけのことを17文字で言っています。すごいですね。星新一より短いショートショートです。
では、もう一句
「追い剥ぎを弟子に剃りけり秋の旅」 与謝蕪村
イメージがわきましたか?
高徳の坊さんが、一人山道を歩いていたら、追い剥ぎに会った。「命惜しければ、着てるものから、持っているもの、身ぐるみ置いていけ!」「はいはい、こんなものでよければ」と身包み男に差し出した。
追い剥ぎは、うまく言ったわいと山道を急いだが、ふと考えた。あの坊さんのあのさっぱりした態度はどうしたものだろう。あのように物事一切に執着せず生きることができたらなんとすばらしいだろう。そう考えたら、あの坊さんが慕わしくなり、急いで道を取って返し坊さんを追いかけた。
再び追い剥ぎが現れたので坊さんもさぞかし驚いたろう。今度は命までも取られるかと思いながらも「どうしたのですか」とたずねると、「わっしを弟子にしてやってくだせぃ、つくづくこの泥棒家業がいやになりました。」しばらく考えて、「それはうれしいことです、私もあなたのような弟子をほしいと思っていたところでした」
その夜、宿で風呂を一緒に浴びたあと、坊さんは宿からかみそりを借りて、男のぼさぼさの髪をきれいに剃ってやった。部屋の外には仲秋の月、庭には萩の花。
この短編小説を17文字にしたものだそうです。
コミュニケーションがうまくいくのに、バックグランドすなわちコンテクスストが共通であると同時に、極端な例ですが、想像力も大事であるという落ちです。実際、想像力の無い人は、困りますね。とくに、相手の立場になってという想像力ができない人は困ります。
では宿題2題。
ようがんす袂(たもと)の石は捨てなせい 川柳
お手討(てうち)の夫婦(めおと)なりしを衣がえ 蕪村